彼の名前はきいち
どもシプリアーノです。今回は趣向を変えて、僕の昔話をしてみようと思っています。全4章構成で成り立っているので、成長を感じつつ聞いていただけると嬉しく思います。
ではいきます。
音声で聞いた方がおもろい!
第一章:僕は広島市安佐南区のある中学校でバスケをしていた。
仲のいい友達がミニバスからそのままバスケ部に入ったので、それに釣られて僕も。
割と憎しみに満ち溢れた3年間だったけど、バスケは誰から習わずともかなり上手くなった。
3年生になると、選ばれはしなかったけど選抜の練習会には呼ばれた。
そうでなくても3年間、たった数校しかない区でバスケをしていれば、何となくの知り合い・顔見知りは出来るものだ。
別の中学校に、2年生の時からスタメンに選ばれる逸材がいた。それがキイチだ。
身長は180以上あったけど、バスケは上手くない。全く上手くない。超下手。
さらに言うとビジュアルも良くない。180センチの綿棒に、やる気のないラインスタンプ見たいな顔を描いた様なビジュアル。そう、細かった。
もっと言うと絡む時の対応も毎回良くない。他校の生徒に絡まれて嬉しいくせに「何じゃお前」とか「うっせー」とか「うざ」とか、すぐ言う。
言葉とは裏腹に、笑った綿棒を見るのは今にして思えば可愛くて好きだったんだな。
第二章:高校でもバスケをしていた
僕は高校でもバスケをしていた。
自分で言うのはおこがましいが、主観ではあってもあの世代の国体チームなら、僕が入っていないのはおかしいと本気で思うくらいには上手くなっていた。
そしてお隣の高校でキャプテンになった男がいる。そう、綿棒男、きいちだ。
その高校とは3年生の時に二度、練習試合をした。二回ともボッコボコにした。
一度は向こうの体育館でボッコボコ。二度目はこちらの体育館でボッコボコだ。
二度目の練習試合のとき、綿棒は遅刻をしてきた。キャプテンなのにだ。
ヘラヘラニコニコ、1試合目の半分が終わった頃に体育館に入ってきて、アップもしないまま試合に投入された。
キャプテンなのだから仕方ない。戦力として計算されている以上、遅れてきても即行出場すべきである。
試合状況がすでにボコボコなので、尚更である。
ちなみに綿棒が試合に入ったところで戦況は全く変わらず、ほぼ僕の独壇場で試合を締め上げた。うちもキャプテンは怪我なので出ていない。
大三章:高校バスケは終わり
俺たちの夏は割と早めに終わった。
県でベスト16だか8だかの相手と当たり、第2ピリオドまでは同点だったが、最終的に10点差で負けた。
その高校とはその年3回当たっていて、やる度に点差は縮まっていたのだが、残念ながら負けた。
僕は勉強なんてするわけもないので暇になり、家や区民体育館でシューティングをしたり、公園でフットワークの強化をしたりしていた。
アイデアとは若さと時間があればいくらでも降りてくるもので、「そうか。社会人のリーグに登録すればいいのか!」と、唐突に思ったのであった。
そこからは話が早かった。
中学と高校で仲の良かった数名に声をかけ、実際に練習をしてみたりユニフォームのデザインを考えてみたりした。
ある日区民体育館で練習していると、何やら見覚えのある男・・・いや綿棒が、風に揺られて体育館に入ってきた。
そう、きいちだ。数名の友人と後輩を連れている。
さすが、曲がりなりにも弱小校でキャプテンを務めただけはある。曲がりやすい綿棒だ。
僕は素直に嬉しかったので、話しかけに行ってみた。
相変わらずのクソ対応だ。やる気のないラインスタンプフェイスをヘラヘラさせながら、暴言を吐き出す。
その綿棒のどこにそんなに暴言を溜めて置けるのか、広島の七不思議だ。
第四章:綿棒ではなかった
ちょうどいい人数も集まったところで、簡単なゲームをしようと言う話になった。
向こうは友人と先輩後輩、いわばいつも通りのチーム。
こちらは急ごしらえで、集まるのもやっとだというお遊びチームだ。
とはいえ向こうのキャプテンはあのきいち。メンバーの顔つきや体格を見ても、僕一人で何とでもなりそうな雰囲気だった。
結果、またも奴らをケチョンケチョンのボッコボコに蹴散らし爽快感に浸った。
無い覇気の中心人物きいちは、やっぱりヘラヘラしている。
きいちだけじゃなく、友人や後輩たちもヘラヘラしている。だがそれでいいのだ。
本来スポーツとは勝ち負けでなくいかに楽しめるか、いかに人生を豊かに出来るかが重要なのは、今だからこそわかる。
「おいアイス奢れよ~」と後輩や友人から、いじられたかられヘラヘラしているきいちは、もしかすると人望に厚い人間なのかも知れない。
そう思い微笑ましい空気の中放たれた言葉に僕は耳を疑った・・・
「おいアイス奢れよ便所コオロギ~」
彼はもはやキイチという人間でも綿棒という消耗品でもなく、便所コオロギという、破壊力のある虫の名前で呼ばれていた。
めでたしめでたし。
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